盛岡のCafeJazz 開運橋のジョニー 照井顕(てるい けん)

Cafe Jazz 開運橋のジョニー
〒020-0026
盛岡市開運橋通5-9-4F
(開運橋際・MKビル)
TEL/FAX:019-656-8220
OPEN:(火・水)11:00~23:00

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幸遊記NO.375 「福田隆の青柿坊・伊藤酒店」2018.3.26.盛岡タイムス
 盛岡駅から開運橋を渡り開運橋通り2つ目の信号交差点を渡った左角に古い公衆電話のあった酒とたばこの「伊藤酒店」が道路拡張工事の為解体され、この春姿を消した。経営していたのは伊藤泰二さん(84)美佐子さん(84)ご夫妻。道路拡張が発表されたのは僕が盛岡に来た2001年の春。当時僕はヘビースモーカーでロングピースを日に3箱(60本)起きてから寝るまで、ひっきりなしに吸っていたことからよく店に買いに走った。ところがある日たばこを吸うと体がビクッ!ビクビクッ!とあちこちケイレンするようになり、これはやばい!と誕生日だった2003年4月20日、30年間吸ったたばこをやめた。
 話が外れた。伊藤酒店のご主人にいつだったか店の2階に案内され、通されたところは美術家の故・福田隆さん(1917~1991)が亡くなられるまでの10年間使っていたという創作室「青柿坊」だった。福田隆さんは「おひげさん」と呼ばれ、彼の一生は「人を愛し、酒を愛し、日々是好日の境地」だった様子だが、太平洋戦争、シベリア抑留、戦後は美術工芸教師、染め絵作家、さらには俳人、エッセイストとして市井に在り続けた人であったらしい。その部屋で「染め作品が出来る度に1枚必ずくれたので、それを全部額装している」と見せてくれた。それはまさに、師・汲泉氏の泉を汲んで飲んだがごとき同系作品の数々。そして「青柿坊」を訪ねて来たという人達との写真に登場する長岡輝子、深沢紅子、栗原小巻、杉村春子、樫山文枝、斉藤美和、秋山ちえ子、船越保武、藤井勉氏等々の顔々。
 伊藤酒店の奥様・美佐子さんは宮古の出身の方、それこそ福田隆さんの師・中井汲泉氏(1892~1970)の京都の家にも行ったのよ!そしてこれ船越保武さんに描いてもらったのよという美佐子さんの横顔色紙を見せて貰ったら、“なんという美しさ”であった。更にもう1点と深沢紅子さんの花の絵(昭和49年5月18、額装した人・福田隆)の裏書まで拝見。
 そうだ3月25日は美佐子さんの誕生日。福田隆さんが作った昨日までのような「どごがで泣いでる吹雪いでる、足コ冷(つめ)でど鴉(からす)の子、橋のたもどのおら家さ来(こ)」。や今日のような「お山の雪コとげ出すて氷(すが)コいっぺ流れでる、土手はばっけァやめめんこ」の北上川昼曲の詩がふと頭に浮かび、以前「しゃぼんだま随想・福田隆」「夢十夜・中井汲泉」この2冊を僕にくれた2人の女性の顔も浮かんで来た。ああ!春だ!幸福だなあ!



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